6. まとめ

 今回のプロジェクトにおける調査・研究結果をまとめますと以下の通りです。

  • 調査期間および調査件数などをふまえ、今回の研究では日本列島の地質と仕込み水の関係を巨視的なスタンスで検討することを主目的としました。(東北日本・西南日本内帯外帯)
  • 283水試料のトリリニアダイアグラムによれば、東北日本は中間型~アルカリ土類炭酸塩型、西南日本内帯はアルカリ土類炭酸塩型に集中することが明らかになりました。
  • 水質は河岸段丘や海岸平野などの流動地下水型と、花崗岩類の深層風化によるカルシウムや炭酸水素イオンの溶出などの影響(源岩依存型)を受けている可能性があります。
  • 花崗岩類の存在が日本列島の地質を特徴づけているので、それに関わった地下水も日本型テロワールといえるのではないかと感じられます。

7. あとがき

 本調査では、予定されていた西南日本外帯(付加体)の地域を含めいくつかの実地調査が、残念ながら新型コロナ感染緊急事態宣言によって実施できませんでした。しかし、今回現地調査で行った「ブラタモリ風」酒蔵訪問は、新しい酒蔵観光スタイルとして有効ではないかと感じることができました。蔵の周辺や水源付近を見て回ることにより、水に関連した酒造りの歴史や成り立ちをより深く理解することができます。

本研究を通じて、日本列島の地下水、あるいは日本酒の仕込み水は、数億年間のプレート運動というダイナミックな地球の営みがつくりだしたということを広く知っていただければ幸いです。

謝辞

 お忙しい中、仕込み水を提供いただいた全国の酒蔵の皆様に感謝の意を表します。

今回の調査は、国税庁令和2年度日本産酒類のブランド化推進事業「地質に対応した日本酒仕込み水の水質分析体系化によるテロワール・ブランディング」によるものです。ここに関係当局に感謝の意を表します。