“テロワール” ということばは、主に、ワインとその原料となるブドウが生産される畑をつつむ、気候・地形・土壌および人々の営みが生み出す特徴を示す概念として使われています。フランス語の「terre(地球、地面、土地)」に由来し、世界のアルコール市場に通用することばとなっており、日本酒に対しても用いられることが増えつつあります。2010年に国際ブドウ・ワイン機構(OIV–International Organization of Vine and Wine)が定めた定義では、「ブドウ栽培、ワイン生産におけるテロワールとは、ある限定的なエリアにおいて、このエリアから産出される製品に固有の特性を与えるとされる、特徴的な物理的生物学的環境と、人々が実践するブドウ栽培・ワイン生産手法との相互作用から生まれる集合知を表す概念である」とされています。
日本酒の場合、その原料である米は、その保存性の高さと運搬のしやすさから遠隔地から仕入れることも一般的であり、厳密に言えば日本酒に対してテロワールということばを使うのは相応しくないといった意見もあります。しかし、前述の国際ブドウ・ワイン機構の定義には「(前略)このエリアから産出される製品に固有の特性を与えるとされる、特徴的な物理的生物学的環境と、人々が実践するブドウ栽培・ワイン生産手法との相互作用から生まれる集合知を表す概念(後略)」という文言が含まれていることから、本事業においては、「土地」に根ざした日本酒ブランドを育む価値を明らかにして、その価値の向上を目指す取り組みを「日本酒のテロワール・ブランディング」と呼ぶことにしました。